「夏の服装」と「プロ野球」
今年の夏は、'95年の記録を抜いて、ここ数十年の間でもっとも暑い夏になりそうです。東京以西では、もうすでに1か月以上真夏日が続いているところがほとんどです。
そんな中、TBSのニュース番組・News23のメインキャスター筑紫哲也さんが、毎日番組に沖縄の「かりゆしウェア」を着て登場しています。沖縄では、県知事をはじめ、あらゆる人が、この「かりゆしウェア」を仕事中も正装として着ているそうです。アロハシャツに似ていますが、それほど派手なものは多くないようです。
沖縄は亜熱帯地域に属しますが、真夏の最高気温は32℃程度。むしろ本州の方が暑いんですね。それなのに、沖縄では「かりゆし」、東京ではきちんとネクタイを締めた上に、背広まで着て・・・
プロ野球の近鉄球団買収に乗り出したことで一躍有名になったライブドアの堀江社長は、普段からTシャツにGパン姿を通しています。テレビ番組に出演するときもそのままの姿ですから、非常識だとかマナー知らずだと批判されています。
実は、私も堀江さんと似たような格好をして仕事をしています。上はポロシャツ、下は七分丈のズボン(ときにはジャージ)、ソックスは履かず、サンダル履き。ただ、さすがにお客さんに会うときや、セミナーの講師をつとめるときなどは、ビシッとダブルのスーツで身を固めますけどね。
私も銀行員時代は、どんなに暑くても意地でも長袖シャツにネクタイ締めて、上着を着ていました。当時は慣れればどうってことないと思っていましたが、本当は身体によくないのではないでしょうか。私は汗かきですから、ネクタイを締めた首のまわりがいつも汗でベタベタしていたのを思い出します。ワイシャツの首まわりや袖口の汚れは、とりわけひどかったですね。
(ここから徐々にプロ野球問題に入っていきます。)
私も仕事中ラフな格好をしていますから、堀江社長のスタイルを必ずしも非常識だとは思いません。しかし、そう思う人がいるのも事実です。人はともすると相手の身なり、格好でその人物を評価してしまうところがあります。
今回、堀江さんはそれで随分損をしていると思います。堀江さんは、近鉄球団を買収することが目的であって、自分流のスタイルを貫いていることをアピールすることが目的ではないはずです。しかし、そちらの方が目立ってしまっているようです。
その結果、身なりを気にするような人は、堀江さんの話をまともに聞こうともしないのです。1週間くらい前の「朝まで生テレビ」という番組で、野球解説者の東尾さん(前西武ライオンズ監督)などは、まともに堀江さんを見ようともしないのですよ。身体を斜めに向けて(いわゆる「斜に構える」という状態)、決して相手を受け入れようとしない姿勢が露骨に出ていました。
東尾さんのそういう姿勢自体にも、問題があると思いますが、そうさせた堀江さんにも問題があるのではないでしょうか。
堀江さんが一生懸命話をしていくうちに、東尾さんもときには興味を示すようになりましたが、初めのうちは、「何ともいかがわしいヤツだなあ」と思っている気持ちがはっきり表れていました。
そう思われるのって、損だと思いませんか?
相手にまともに話を聞いてもらえるようになるまでに、どれだけの努力を必要とするのでしょう。
もし、堀江さんがきちんとした格好をして登場していれば、「どんなヤツなのかよく知らないが、取り敢えず話だけは聞いてやろうか」と思ってもらえる可能性が高まったのではないでしょうか?
近鉄球団の問題は、あれだけマスコミに取り上げられていながら、堀江さんが近鉄球団に提出したという「新しい球団経営に関する提案書」については、ほとんど知られていませんよね。話の流れが、球団合併から、1リーグ制へと変わっていったということもあるでしょうが、問題の発端になった近鉄球団の赤字経営を改善する方法を具体的に提案しているにもかかわらず、マスコミもほとんどその内容に触れようとしないのは、やはり堀江さんに対する拒絶反応が影響しているような気がします。
近鉄の存続、12球団による2リーグ制維持を願う多くの野球ファンは、「ライブドアに売ればいいじゃないか」と言いますが、堀江さんの提言を十分理解した上でそう言っている訳ではなさそうです。
皆さんは、堀江さんの具体的提言をご存じですか? ライブドアのホームページに載っていますので、一度読んでみて下さい。いいことがいっぱい書いてあります。
http://corp.livedoor.com/img/pdf/0709.pdf
話が脇道にそれてきましたが、要するに、目的達成のためには、それを容易にするような手段を採らなければならない、ということを申し上げたいのです。
堀江さんが、普段会社でどんな格好をしていてもいいのですが、人前に出るとき、しかもその人が自分の味方になってくれる可能性があるときには、少なくともその人に嫌がられないような格好をしておくべきでした。そうすれば随分と展開が変わったと思います。野球界の発展を真剣に願い、近鉄球団の存続と2リーグ制維持を希望している野球解説者でさえ、堀江さんの格好には眉をひそめている人もいました。
近鉄買収話はライブドアの売名行為だと思った人もたくさんいましたが、その人たちは「もし堀江さんが真剣に球団買収を考えているのなら、もっとまともな格好をして出てくるはずだ」と考えたという面もあったのではないでしょうか。
近鉄の合併話を元に戻すためには、選手会のコミッショナーに対する提訴、あるいはスト実施しか残ってないとしたら、悲しいですね。堀江さんがスーツを着てネクタイを締めて登場していたならば、もっと違う展開があったのではないかと思うと、ちょっと残念です。
(2004年8月12日)