中日春秋 2002/06/04 「いま、この国を「自信喪失」の気分が覆っているようだ。日本の…」 ▼いま、この国を「自信喪失」の気分が覆っているようだ。 日本の高校生が、米中の生徒に比べ自分に否定的になっているという 調査結果も明らかになった ▼「自分は駄目」と思うことがあるのは四人に三人。米中は半分以下だ。 「計画をやり遂げる自信」があるのは四割弱しかいない。 「あまり誇りに思えるようなことはない」という生徒は半数を超えた。 だからと言うべきか、家などで勉強しない人の割合は飛び抜けて高い ▼子どもは大人の背中を見て育つ。大人の世代が、時代の課題を担い、 真剣に立ち向かっていれば、その姿を見つめている若者が自信や誇りを 見失うはずがない。 現実はどうか。政治、経済、社会、どの面も総崩れの感があり、 大人たちが自信喪失のまま右往左往している ▼米国の学者が『ジャパン・アズ・ナンバーワン』を書いてから二十年余り。 いまでは「世界一」どころか、日本国債の格付けは一気に途上国並みになった。 援助しているアフリカのボツワナの下である。 ホテルに例えると、最高級の五つ星から急落の二つ星扱いか ▼国債だけではない。国際機関の評価によると、 日本政府の統治能力は世界四十九カ国の中で三十一番目という。 こうした格下げに対する反発、強がりだったか、 福田官房長官が「非核三原則」見直しに言及した。 政治センスに欠ける発言で、自ら格下げを実証してしまった ▼世界の耳目が集まるサッカーW杯の最中、発言にどんな意図があったか。 きょうのベルギー戦の勝利ならともかく、 日本人が核保有で自信を持つ道理はない。