女優でユニセフ親善大使の黒柳徹子さんは、難民キャンプでも、… ▼女優でユニセフ親善大使の黒柳徹子さんは、難民キャンプでも、 どこでも、希望を失った子にあったことがない。 近著『小さいときから考えてきたこと』(新潮社)でそう書いている ▼スーダンの少年は、地雷の爆発で右目を失明し、 次の日、眼球を摘出する手術をするというのに、何になりたいか、 と聞いたら「病気を治すお医者さんになりたい」と答えた。 勉強を禁止されていたアフガニスタンの小学生の女の子は 「先生になりたい」といった ▼「神様は、子どもたちに希望を持つ力をお与えになっているに違いない」 と黒柳さん。地球上の87%の子どもは発展途上国で暮らし、 その多くが命を心配しながら必死に生きている。 ちゃんと食事をし、予防注射もして、教育も受けているのは、 残りの13%、一握りの子どもだ ▼ありがたいことに、日本はその13%の中に入っている。 でも、ここの子どもは希望を見失ったらしい。 日中韓三カ国の中学生の意識調査で、 将来に「大きな希望を持っている」と答えた生徒は、 中国が91%と突出して高く、韓国は46%、日本は29%にとどまった ▼村上龍さんの小説『希望の国のエクソダス』が思い浮かぶ。 中学生にいわせた言葉に「この国には何でもある。希望だけがない」。 将来の自分の姿を今の大人に見ようとするのが子どもだが、 親たちの世代は楽しそうじゃない。 どこに希望があるか、と小説は問うたのだった ▼無気力、無関心な中学生群像は、豊かな現代社会の裏返しだ。 あすへの希望と自信を見失っているのは、実は大人たちではないか。