ヨーロッパ放浪記

-----------------------------(酔うロッパ放労記)

 

.《アントワープ、ブルージュ》
  〜老人とルーベンス

 

6月27日(5日目)ブリュッセルで酔いつぶれた自分は早めにアントワープへ移動
初めてユーレイルパスをまるで水戸黄門の印篭のように偉そうに見せた
1等車両に乗れるのに遠慮して2等車に乗ったような気がする
アントワープは単純にフランダースの犬に出てきた
ネロとパトラッシュが最期に見たあの絵画を観たい、
それだけの理由で寄りたかった
アントワープセントラル駅は工事中でちょっととまどったが
この駅は、その後数多く見た駅の中で一番印象的だった
美しく、かっこよく、適切な比喩が見つからないが、よく洋画にでてくる
車両がホームより高い、天井がアーチ型で自分が主人公になった気にさせてくれる
そんな素敵なホームだった
工事中のため、お目当てのユースホステルが見つからない
郊外に、もう一つお目当てのユースがあった
そこまで電車2駅、いくことにする そこでとりあえずゆっくりしよう
そこは、今回の放浪の中で一番安かった宿だ
思うに、当然かもしれないが郊外ほど静かで安い宿がある
ブリュッセルの都会めいたところで幾分気が滅入っていたのかもしれない
そこはアントワープのベッドタウンらしく高層アパートが建ち並ぶ中、緑も豊かだが
そばに高速道路が通っていて結構うるさい、そんな環境だった
気さくな女性スタッフがやさしく受付してくれてなおさら気分がよい
またしても猫がお迎えだ



若者たちが(学生)がなにかの合宿で賑わっていた
そこで、同室となったMr.Balemanというベルギー人の老人と出会う
お互が片言の英語で一生懸命伝えあう、
彼は、奥さんを失って一人で週末からユースに来ているという
子供の家が近くにあるのだが、狭いし、迷惑をかけたくないので
夜はこうしてユースに泊まっているのだそうだ
「一人で寂しくないのか」と聞くと黙って男の顔をしていた
自分も実は勤めがなくなりプーだと伝えると
I have no job. In Japanese Pooとかいった)
「この旅がきっと何かを教えてくれる」とかいってくれた
わからないなりに、こちらが話を一生懸命聞くものだから
気に入ってくれたらしくあれやこれやと長話をしてくれた
普段、話し相手もきっといないのだろうなと思った
(どこの国でも老齢化問題はあるのだ、でも自分がいつかは
老人になることを忘れて、家族は核家族化していく 寂しいよなあ)
それでも、子供や孫に会いたい、でも気丈におれは一人で大丈夫だと
そんな感じだった
同じ部屋のアメリカ人も話しに加わり、(彼はレンタカーで娘さんと
ヨーロッパ一周をしているとのこと、ケンブリッジにも同様の親子がいたが
将来、自分の娘とこうしてヨーロッパを回れたら幸せだろうなと思った)

ベルギーで一番いいところはどこだ、という話になり
ベルギーに来た以上ブルージュを見ないで、行ってしまうのはもったいない
ということになった



アントワープで絵をみたら、すぐにでもオランダへ行こうと思っていたのだが
その老人Mr.Balemanがいうブルージュ is the bestのアドバイスに従うことにした
その同室の二人にはデジカメの写真をメールで送ることを約束した
その日はスーパーで買ったワインとパンとソーセジで夕飯
27日に飲んだメモ:ステラ缶ビール350ml×2(二日酔いでも夕方には復活)

翌日6月28日(水)(6日目)
Mr.Baleman
と一緒に朝飯をたらふく食う
彼に教わったのだが、余分にパンをもらい、紙ナプキンで包んで昼飯にする
のだそうだ、うんグッドアイデア・・・
ブルージュへ
ブルージュは“天井のない美術館”といわれるそうだが、まさしくその通り
ベルギーそのものを思わせるたかーい教会が建ち並び、その陰がさす静かな石畳の上に
黒い修道服を着た尼僧が顔を隠して歩いていく・・・おお神秘的なのだ
鐘楼に根性で登り、(バカは高いところが好き)街を一望した
街がきれいにみえるのは
その建物の高さと屋根の色の統一とにあると
なんかに書いてあった(納得)



広場で昼飯にフライドポテトを食べる
名物らしいマヨといういわゆるマヨネーズを鬼のようにかけたやつだ
けっこうウマイ (ビールに合えば何でもウマイ?)
そのあと、結構歩いた、バスをうまく乗りこなせないのがいけない
とにかく旅行中は歩いた 重たい荷物はYHにあずけてあるから
デジカメ一丁で身も気も楽だ
YHに戻り、ピザを頼んでMr.Balemanと一緒に食べようと思ったが
彼はなにやらパンをかじって、おれはイイとかとで断られた
それどもまたいろいろ話をした
日本では失業すると国から金はでるのかとかいろいろ聞かれた
シャワーは暖かいし、洗濯も空気が乾燥しているのですぐ乾く
こういうことが何よりもうれしい
夕べもそうだったがやっと落ち着いて眠れると思ったものの
今度は窓の隙間からヤブ蚊が入ってきて一晩中、ぶーんとかいって
刺されたりしてまた熟睡はできず(虫さされもってきてよかったあ)
蚊取線香もあればなあと思った

28日に飲んだメモ:ピエール生Half, 1pint,ブラウン1pint×2

6月29日(木)(7日目)
翌朝、またしっかり朝一で彼と一緒に昼飯分までの朝食をとり
アントワープへ
アントワープの駅の周りはきらびやかなイタリア人でいっぱいだ
宝石店が建ち並ぶ、ああそうだベルギーダイヤモンドだ
おれには関係ないね


市内観光、王立美術館の帰り
Mr.Baleman
のこともあってかホームシックか遂に家に国際電話する
生きてるとだけ言ってわずかな小銭ですぐ切れたが、
要領を覚えれば公衆電話から簡単だ

それから聖母教会でついに念願のルーベンスを観る
教会の前では青銅色に全身を染めたルーベンスのパントマイムをやっていた
フランダースの犬は作り話だが、アントワープではあまり有名ではなかったそうだ
日本で翻訳されアニメ化もされ大人気になったあと、逆輸入で人気を得たそうだ
もっとも観光に利用されただけかもしれない
でも、あのネロがどうしても観たかった「キリスト降架」
おれも遂に観たぞーという満足感
クリスマスの夜、愛犬パトラッシュと願いが叶うと同時に
寒さと空腹で死んでしまったあの話を思い出してしまったか
またも泣き虫たけちゃんはその絵の前でおんおん泣いてしまいました
その絵画の規模と背景思想の壮大さの前にただただ絶句です
ルーベンスやるなーこの一言です
そのバイタリティが否応なく伝わってくるのです
教会の薄暗い中、賛美歌の流れる中、いろいろな思いが駆けめぐり
ルーベンスルーベンス、日本に帰ったら勉強しようと何度も心でつぶやきました
そのルーベンスの家も見ました
彼は7カ国語をもしゃべる外交官でもあったそうだ
これから行くヨーロッパのあちらこちらでルーベンス出会うことになる
彼は当時の制作体制でどうやってあんなんい大きな又たくさんの絵画を
外交官という要職につきながらこなせたのだろう????
わたしはかように思う
創り出すエネルギーさえあればなんだって出来る
エネルギーがないから暇になったりつまらなかったりするのだ
一生ルーベンスのようにエネルギーを持ち続けよう!
と心に堅く誓うのだった

さて泣くと腹が減る、にょーぼーの声を聞いたらもうパンは食えん
せっかくヨーロッパまできてなにが日本食だ、と思っていたものの
7日目にしてもう限界だ 米が食いたい 死ぬほど食いたい
駅の近くで中華レストランを見つけ、炒飯の字を見つけたときは
もう店の中にいた
ワンタン麺と卵炒飯をすさまじい勢いでビール2ハイでかっこんだ
Half pint×2



やっと飯らしい飯を食って落ち着いて幸せになって
さらに駅でデビルビール1pint
さあ勇気をくれた老人とルーベンスをあとにアムステルダムだ
アムステルダムでは、もうひとつの欲求をみたす・・・・

乞うご期待、次回、飾り窓のアムステルダム
(以下次号へ続く)
次号、8.アムステルダム

 

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