ヨーロッパ放浪記

-----------------------------(酔うロッパ放労記)


13.《ナポリとボローニャ》
     〜スパゲッティの食べ比べ Scusi!


7月8日(土)(15日目)の夜から


今日は2003年5月5日
なんと、1年以上ぶりに執筆再開
もう3年前のことなんか忘れちまったぜい
と、いいながら未完のまま、この放浪記が終わるのも悔しい
こんな駄文でも、熱心な読者からのリクエストもあり
ちょうど出発日6月23日までには完成するつもりであります

まずは、もう一度、そのときの状況に自分をイメージすることから
そうそう、ユーレイルパスの期限が近づくにしたがって
もっとあちらこちら見たい気になり、
ほとんど電車にのっている状態からでしたね
スイスはブリークからイタリアはミラノ、ミラノからナポリ行きの
ES
(イタリア版新幹線)に乗ったところからです
車窓から・・・

窓からは、時々大きなひまわり畑が、現れる
一面のヒマワリが太陽をあびて、それは素晴らしい景色でした

ブーツのように長いイタリアを北からいっきょに南下
時間がないので、目的はスパゲッティの食べ比べだけ・・・
パスタといえば、18歳のころ(1976年昭和51年)までは
ナポリタンとミートくらいしかお店のメニューに無かった気がします
よくあって、インディアンとかいってカレー風味のがあるくらいだったかな
そのころ、東京の渋谷に壁の穴とかいって、画期的たらこスパが登場するころから
わたしのスパゲッティ人生が始まったといっても過言ではありません
(一応、スパゲッティ専門店でバイトして、
 自分でもおまかせ店長で しこしこ作るまでになった若い時期もありました)
スパゲティの食べ方や茹で方のウンチクが書かれた
伊丹十三の「ヨーロッパ退屈日記」から大いに影響を受けました
(もう廃刊になっているんだな、わたしが持っているこの文庫、本結構値がつくかも)

結構、伊丹ファンであったわたしは、ここにリンク集を列挙しておきます
ヨーロッパ退屈日記のことを書いたエッセイ
伊丹十三エッセイの魅力
伊丹十三さんを悼んで
イタリアの文学ファン向けに大江健三郎と伊丹十三の関係
などなど、

ここで、おさらい(超基本的というか、確認事項)
イタリアのボローニャで作られたソース、ボローニャ風ソースが
いわゆるミートソース
ナポリで作られたソース、トマトソースであえたのがナポリタン
こんなことはどうでもよいのですが
要するにイタリアの南北でスパゲッティがどうちがうか
この目で、この舌で確かめたかったのです

それで、最初にナポリ
ナポリには20:30着、
陽が落ちてしまったので、輝く太陽、紺碧の海
「ナポリを見てから死ね」の雰囲気まではわからなかったけれど
海のにおいはした
ヨーロッパのYH(ユースホステルガイド)の本を頼りに
ナポリ駅から地下鉄で4つ先のメジェリーナ駅のYHに
滑り込みセーフ
いまから考えると、よくやったもんだと思うけど
とてもイタリア語なんかしゃべれないから、電話予約もせず
いつも、そのユースへ直行、その場で交渉ということをしていた
土曜日だというのに、よくとれた
メシ付き、シーツ付きで24000Lt(1200円だべ)
(おおそうだ、3年もたつと、貨幣も今はユーロに変わっちまったじゃないか)
時間が遅いので、シャワーも浴びず
ユースの飯に目もくれず、街に出る
初めての街でまっくらで、なかなか、求めているような店が見つからない
港に近づくと、あったあった道路までテーブルを出して
わいわいがやがやのカフェが!

日本人観光客なんてひとりもいない
地元のひとたちが、いわゆるイタリア独特の陽気さそのもので
騒いでいる
出ている料理も、みんな旨そうだ
給仕に招かれ、道路わきの2人がけのテーブルに一人ですわる
メニューを見たってわかりゃしない
周りの人たちが食べているものを、じっくり観察
ムール貝の料理が、圧倒的に人気のようだ
よし、まずはあいつと白ワインだ
で、注文をしようと思っても、給仕は気が付いてくれない
給仕は映画でよくみる ちょっと背は低いが、むちゃくちゃ愛想のいい
おっさんだ
うーん、こういうときどうすればよいのだ
手元に持っていったヨーロッパ旅の会話集のイタリアのページをめくる
人を呼び止める時の決まり文句
これだ、小声でちょっと練習して、今度は勇気をだして大きな声で
「Scusi!」(スクーズィ)(ク にアクセント)
その瞬間、
とてもにぎわっていたそのカフェ全員が
一瞬静寂となり 私の方を振り向いた
日本人は、わたしだけだ
給仕がニコッと(^o^) 笑い、こちらに来てくれた

このスクーズィの雰囲気をわかってもらうには
映画「冷静と情熱のあいだ」の篠原涼子が同じように叫ぶ場面がありますよ
彼女より私の方が先だったんだけどなあ
ビデオでご確認あれ

左がそのときのムール貝、真ん中が魚介類の前菜とワイン(バケット付)、
ワインはおまかせ、1本(10000Lt)ペロリといった (日本円で600円ですぞ)
右がその店のメニュー、いいデジカメなら繊細に撮れただろうけど、残念


スクーズィと叫んだとたん、隣の人たちが話しかけてきた
ジャポーネかなんかで日本人だとわかると
ナカッタ(中田)なら知っている、とか・・・・
とても陽気な元気なおばさんが、デジカメで写真をその場で見せると
ぜひ、送ってくれと住所を書いてくれた



学生たちも、ピザを1枚、食べてみろとすすめてくれた
日本人観光客(には見えなかったかな)が
なんで、こんなところにいるんだ、という感じで
わけのわからない、イタリア語で話かけてくれた
英語は、ほとんど通じないけれど
明るく、にぎやかに、陽気に食事をする
この姿勢、大好きだなあ


花売りの少女も、おもしろい観光客が来たと思い
話しかけてくる
銭はあげられないけれど、ポケットにしのばせてある
花札をあげたら大喜び
花売りの少女に花札・・・いいじゃないですか
さあて、酔ってきているものだから
食べたあとの写真しか残っていないけれど
お目当てのスパゲッティは
ボンゴレビアンコを選択



皿は、見事なマジョリカ
気に入ったのは この皿をちゃんと暖め出してくれているところ
翌日のボローニャとは大違い
少しは、聞いていたが南の方が庶民的で
気取らず、そのかわり、あるものを(しかも新鮮)
いかに美味しく食べられるように工夫がされている
ゆで加減は、ご存知アル・デンテ(これも、伊丹氏が広めたんじゃなかろうか)
バターよりオリーブオイル
太陽を感じる素敵な料理たち
イタリアでも南の方がコレステロール値が少ないのは
食生活の違いからだと見直されているらしい 
南イタリア料理と健康
イタリアンハンドブック は必見
このようなサイトは帰ってきてから知ったのだけれど
知らないほど、面白いことはない
肌で、舌で、この眼で実感したのだから
料理は、かくあらん
と、思いっきり満足した、ナポリの夜でした
そのお店の外観(酔っぱらってよくわかりませんが・・・)


白ワイン1本はさすがに、きいてヨタヨタ歩きでYHへ戻る
そのYHは真っ暗な坂を上ったところにあった

さあ、飲んだあとは、のどが渇く、
お決まりの炭酸ミネラルもない、ましてや自販機などない
水はあるが、ナポリの水はダメとのこと
シャワーをあびるときは我慢したものの、夜中
どーしてもどーしても水をがぶ飲みしたくて
水道のの水を下痢になってもいい覚悟でついに飲んでしまった
翌朝、
7月9日(日)(16日目)
たくましくなりつつあった私の胃腸は、何もなかったかのように
パンとコーヒーを受け付けた
まだ、喉が渇いていてコーラの一気飲み(350mlが1500Lt)、ミネラル(2リットル)が
2800Lt、ナポリは水の方がコーラより安い

さあ、いよいよ忙しい私は、ボローニャへ


また、例のESだ、
映画に出てくるような愛くるしい少年が、こちらを見て微笑む
紙ナプキンで、おりがみの鶴を折ってあげると喜んでくれた

ボローニャ駅で今夜乗るスペイン行きの夜行の切符を取ろうと思っても、取れない
半分あせりながら駅の近くのトラッテリア
生ビールとグラスワイン
前菜にボローニャ風ソーセージハムと
ボローニャ風スパゲッティ



左のソーセージハムは美味しかったが、袋の切れ端が入っていたので
指差したら、もう1皿持ってきてくれたけど
いかんせん、スパがダメだ、皿はいいものを使っていても
温かくない、肝心のアルデンテはとても合格とはいえない
ソースも水っぽかった
ひょっとして作りおき?ではなかっただろうか
雰囲気はちょっと高級そうなのはわかるけれど、客もまばら
思うに、やはり北は気取っているのではないか
単に悪い店とも思えない高級さは感じたので
チップを給仕にあげたら 
きたないひげもじゃの日本人がよくくれるわって、顔で
グラッツェグラッツェ だって

ピザもたらふく食べたかったけれど、
街中のピザ屋の写真だけ撮って


ボローニャからミラノへ
ミラノに行けば、切符が取れるのでは?と安直な考え
予定では、ここで、スペイン行きの夜行に乗るつもりだったのに
乗り合わせの、最大のピンチ
スペインへ行けない・・・・
ところが、キャンセル待ちが出たのか
ユーレイルの強みか、あと36万Lt(18000円)払うと
特等のメシ付き車両に、間際の交渉で乗れることがわかる
ところが、手元にあるのは円のTC、円はダメだとのこと
両替に走る勇気も無く、金がもったいないのとで
とうとう その最後の夜行を見送った
トーマスクックの時刻表を、ひっくりかえしても、もう今夜は
スペインへ行けない
ここで、わたしの選択肢は次の3つ
1 ついに、ミラノ駅で野宿
2 パリ行の夜行の直前交渉(予約はフルでも、これがなぜかできる)
3 ローマに戻って、ローマ見物後にパリ入り
わたしは、最終的に2の方法をとることに
26600Lt(1300円)払って、クシェットでパリへ
同じ部屋となった家族連れのアメリカ人4人をみて、
ああ家族でクシェットで、こういう旅もいいなあと
ちょっぴりホームシックに・・・
もう一人、黒人の方が同じ部屋で終始、彼はそのアメリカ人と
わたしに気をつかっていた

言葉がたりないので、よくわからないと思いますが
ユーレイルの期日が切れる最終日にパリ行きの電車に乗りたかったのです
その出発の駅がスペインのどこでもいいから、
それが、そのミラノから乗る夜行の次の日だったのです

いつもそうなんだ
いままでがうまく乗り合わせがゆきすぎたんだ
18000円支払うことで特等に乗り、バルセロナに行けたのに・・・
その分、飲んだほうがいいや、と心のどこかで思ったんだな
お金と行動力と自分のしたいことの
バランス感覚
金に糸目をつけずに使いたいものだ、
でも、そういう使い方はいかんぜよ
フランスを拠点に、また動けばいいじゃないか
スペインには、またいつか行けばよい
でも、今回のヨーロッパで、
なぜかもうフランスからスペインへは行こうと思わなかったなあ

今回の結論

・イタリアは、スパゲッティは北より南

・食事は明るく楽しく、陽気に!

・飲んじゃいけないといわれても、水はおいしいし、なんともない

スパゲッティをスプーンの上で巻く、あのやりかた
北の方の習慣らしいですよ、気取って食べちゃだめだめ
ナポリのスパは、スプーンなんか付いてこなかったぜい
今回は、その確認もしたかったんだな
その日しのぎの、旅行はハラハラ
夜行くらい、もっと前にとるべし
でも、その時間に縛られるのも、やっぱやだなあ

おまけです、
映画の中にふと出てくるパスタ達

イタリアは、イタリアだけで何日も滞在したいと思いました
よくばりな私は、いよいよフランス入りです

次号、《マルセーユ》〜プロパガンスの光はいづこに

放浪記目次へ